フレイル~Part3~
  • 3、フレイルの診断基準とチェック方法

フレイルの早期発見は、健康状態を維持し、要介護状態に進行するのを防ぐために非常に重要です。フレイルの診断基準やチェック方法を理解しておくことで、自分自身や身近な高齢者のフレイルリスクを早期に察知し、適切な対策を講じることが可能になります。この記事では、フレイルの具体的な診断基準と、日常生活で実践できるチェック方法について解説します。

フレイルの診断基準

フレイルの診断には、いくつかの基準が用いられます。代表的なものとして、アメリカの老年医学研究者リンダ・フリードらによって提唱された「フリードの基準」があります。この基準は、以下の5つの項目で構成されており、3つ以上該当する場合にフレイルと診断されます。

  1. ①体重減少 最近1年間で意図せずに4.5kg以上の体重が減少した場合、フレイルの一つの指標とされます。体重減少は、筋力の低下や栄養不足と関連しており、フレイルの進行を示す重要なサインです。
  2. ②筋力低下 握力の低下が筋力低下の指標として用いられます。特に、性別や年齢に応じた基準値を下回る握力の低下は、フレイルのリスクを示唆します。握力は、全身の筋力や体力の指標ともなるため、定期的なチェックが推奨されます。
  3. ③疲労感 「何もやる気が起きない」「疲れやすい」といった慢性的な疲労感が続く場合も、フレイルの一つの要素とされます。疲労感は、身体的な衰えだけでなく、精神的・心理的な側面にも関わるため、注意が必要です。
  4. ④歩行速度の低下 歩行速度が遅くなることもフレイルの兆候です。通常、一定距離(例えば5メートル)を歩くのに要する時間を測定し、その結果が基準値を超える場合、フレイルのリスクが高いと判断されます。
  5. ⑤身体活動の低下 日常的な活動量が減少し、家にこもりがちになると、フレイルのリスクが高まります。週に数回程度の軽い運動や外出の頻度が低下している場合は、注意が必要です。

これらの基準は、フレイルの早期発見に役立つだけでなく、個々の生活習慣を見直すきっかけにもなります。

 

フレイルのチェック方法

フレイルを簡単に自己チェックできる方法として、いくつかのツールや質問項目が用いられています。ここでは、日常生活の中で実践できる簡単なチェック方法を紹介します。

  1. ①筋力チェック(握力測定) 握力計を使って、定期的に自分の握力を測定することが推奨されます。握力が低下していると感じた場合は、筋力トレーニングやリハビリを検討することが重要です。握力計がない場合でも、ペットボトルのふたを開ける力や買い物袋を持つ際の重さの感覚で筋力の変化を感じ取ることができます。
  2. ②歩行速度チェック 自宅や公園で、5メートルの距離を何秒で歩けるか測定してみましょう。一般的には、1秒あたり1メートル(5秒以内で5メートル)の速度が基準とされます。この速度が遅くなっている場合は、足腰の筋力低下やバランス感覚の衰えが考えられます。
  3. ③体重の定期的なチェック 定期的に体重を測定し、1年間での変動を記録しておくことが大切です。意図しない体重減少が見られた場合は、食事の内容や食事量の見直し、医師への相談が必要です。
  4. ④疲労感の自己評価 日常生活の中で、疲れやすさややる気の低下を感じる場合は、心理的なフレイルの兆候である可能性があります。ストレスの管理や休息を取り入れつつ、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
  5. ⑤活動量の記録 毎日の歩数や外出頻度を記録し、以前よりも減少していないか確認します。活動量が減少している場合は、積極的にウォーキングや軽い運動を取り入れることが推奨されます。

これらのチェック方法を定期的に行うことで、フレイルの兆候を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。

 

専門的なフレイル診断

自己チェックに加えて、フレイルの診断は医療機関でも行うことが可能です。医師や専門のスタッフが、身体機能や栄養状態、認知機能、社会的なつながりなど、総合的な視点からフレイルのリスクを評価します。

フレイル診断は、定期健康診断の一環として行われることもあります。特に高齢者においては、年に一度のフレイルチェックを受けることが推奨されます。診断結果に基づいて、個々の状態に応じた具体的な予防策や改善プログラムが提供されます。

フレイルチェック後の対策

フレイルのリスクが確認された場合、早期に適切な対策を講じることが重要です。具体的には、筋力トレーニングやバランス運動、栄養補給の改善、社会的なつながりを強化する活動に取り組むことが推奨されます。また、専門家の指導のもと、継続的に健康状態をモニタリングし、フレイルの進行を抑えることが大切です。

結論

フレイルは早期発見が鍵となります。フリードの基準をはじめとする診断基準や日常生活での簡単なチェック方法を活用することで、フレイルのリスクを把握し、適切な対策を講じることが可能です。医療機関での診断と自己チェックを組み合わせることで、フレイルの進行を防ぎ、健康寿命を延ばすための道が開けます。

 

 

2024年09月30日